2021年7月11日

なぜFPの無料相談では保険の見直しばかり勧められるのか

■保険ばかりすすめるFPに辟易する相談者が急増

コロナ禍でオンラインでのコミュニケーションが一般的になり、家計のサポートセンターにも遠隔地からの相談、問い合わせが増えてきました。

ご相談にあたり、事前にメールや電話などで内容の確認をすることが通例ですが、最近立て続けにこのような質問がありました。

「生命保険は見直しできないんですが、相談に乗っていただけますか?」

聞くと過去に何度か他のファイナンシャルプランナーに相談したことがあるそうですが、そのたびに保険の見直しばかり強く勧められたとのこと。

ご相談者は保険以外の心配事(住宅購入や教育費準備など)を解決したかったのに、保険の話ばかりで結局解決できず私の事務所を見つけて連絡を頂いたようでした。

こうした「ミスマッチ」、みなさんも経験されたことがあるのではないかと思います。

では、なぜファイナンシャルプランナーが保険ばかりをすすめるのでしょうか?

そこには構造的な原因があると考えられます。

■保険代理店が営むFP事務所が多い

ファイナンシャルプランナーの守備範囲は広く、それぞれのFPに得意分野が存在しています。

例えば医師という国家資格は一つですが、その中で内科、外科、循環器科、小児科、産婦人科など専門の科があることをイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。

しかし、FP事務所では病院のように〇〇内科、とか〇〇外科、という表記をしているところは少数です。

たくさんのお客様を間口広く取り込みたい思いから、「なんでもできますよ」とアピールするためにファイナンシャルプランナーという職種を使うことが多いかと思われます。

保険営業、特に生命保険においては、新規の見込み客を作り出すことが最も重要で最も困難な仕事になります。

仮にお役に立てるかどうかは分からなくても、とりあえず打席に立つことにかける熱量は他の営業職よりも強いと言えるでしょう。

と言っても、生命保険営業出身のFPが悪いということは全くありません。

金融業の中でも、短期的な利益をとったり投機的な運用を勧めたりするのではなく、中長期的な計画をお客様と一緒に考えて実現していくのは、生命保険に携わる人間が最も長けていると言っていいでしょう。

生命保険と真剣に向き合っているFPは、あなたの不安にずっと寄り添って応援してくれる、心強いFPとなり得るのです。

■保険ばかり勧めたがるFPの背景を危険度別に解説

ファイナンシャルプランナーは、資格をとってからどれだけの経験、勉強をしているかでレベルが大きく変わります。

先程のお医者さんの例でも、免許を取り立ての人と、いろいろな病院で修行をして専門科で開業された人では全く違うことはご理解いただけるでしょう。

キャリアが短いFPでは、まずはFPとして生き残ること、食べていくことが最重要課題となります。

そして、まだまだ顧客も少ないので、新規顧客開拓に全精力をつぎ込むことになります。

その一つとして無料相談のFPにスタッフとして登録し、見込み客のもとに派遣してもらうという方法があります。

自分自身で集客したお客様ではないので、本人の思い以外の力が働いてしまうことがあるのです。

そうした圧力を、危険度別に見てみましょう。

・危険度レベル1 FPがお金を払って情報を買っている

大手のホームページや「全国のFPに無料相談できる」など、FPに相談したい人を集客することで収益を上げている会社があります。

相談するお客様は無料ですが、相談に乗るFPが面談のチャンス欲しさにお金を払っている、という構図です。

つまり、相談したいというあなたの個人情報が売買されている訳です。

1件あたりの金額は3〜4万円!くらいが多いようです。

(私の事務所にもたまに売り込みがあります)

つまり、ファイナンシャルプランナーはあなたと会うためにすでに4万円支払っている可能性があるのです。

と、いうことは4万円以上の売上がないと赤字となってしまいますから、売上を上げることに必死になってしまうのです。

相談者の方にクオカードなどのプレゼントがついている事があったら、そのプレゼントもあなたの前に座ったファイナンシャルプランナーが自腹で払っていると思っていいでしょう。

・危険度レベル2 保険の売上の半分が紹介した会社に取られてしまう

前述の1件あたりにお金を払って情報を買うという方法ではなく、紹介してくれた会社も保険の代理店を営んでおり、そこで契約になった保険の売上を折半する、というスキームもあります。

そうすると、ファイナンシャルプランナーは生き残るために倍の仕事量をこなすか、倍の売上を上げていかないといけません。

つまり、たくさんの保険を提案して契約をしないといけなくなるため、説明の時間も長くなり、本来の相談よりも保険のウェイトが高くなってしまうのです。

本来は保険でない方法のほうがお客様の計画に合っていたとしても、多少の無理があっても保険を勧めてしまうという事があっても不思議ではありません。

ちなみに前述の、1件あたり4万円支払った上で売上の手数料も折半、というダブルで適用になっている仕組みもよく耳にします。

・危険度レベル3 保険の契約率が低いとクビになる会社がある

相談者を紹介する側もビジネスですから、より売上が上がる方法を目指します。

紹介したファイナンシャルプランナーが保険の契約を取れなければ、せっかく高い広告費を払って手に入れたあなたの個人情報も無駄になってしまいます。

同じ紹介をするなら、保険の契約をたくさん取ってくれるファイナンシャルプランナーに紹介したいと考えるでしょう。

生命保険の契約率が高いファイナンシャルプランナーほど優先的にいい顧客情報が回ってきて、成約率が下がると紹介も下がってしまいます。

紹介を受けて新規顧客を開拓する方法しか持たないファイナンシャルプランナーからすると、生き残るために契約率を上げることが命題となっていきます。

少しぐらい嫌われたり、嫌な思いをしたとしてもまず保険の契約を取ることに全力をかけることになるかも知れません。

もちろん前述の4万円払って打席に立ち、上がった成果は半分だけ、かつ、打率が低いと生き残れない、という組み合わせも多く存在します。

当たり前ですが、コマーシャルなどの広告費が大きくなればなるほど、こうした傾向は強くなるようです。

■理想のファイナンシャルプランナーに出会うために

ここまでの記事を読まれると、ファイナンシャルプランナーに相談すること自体に嫌気が差してしまうかも知れませんが、それは誤解です。

こうした裏の事情を知った上でファイナンシャルプランナーと付き合うことができれば、心強い相棒となってあなたの人生を豊かなものにしてくれるでしょう。

無料相談がすべて悪いと言うわけではありません。

こうした背景がありながらも、お客様の相談に真摯に向き合い、解決するための勉強をしているファイナンシャルプランナーもたくさんいます。

そうしたファイナンシャルプランナーに出会うことができたら、ぜひその人を応援してあげてください。

保険もその人から加入すれば心強いし、同じ心配事を抱えている人がいたら紹介してあげてほしいのです。

そうすればそのファイナンシャルプランナーのスキルも上がりますし、あなたにとっても優良なフィードバックが増えるはずです。

無料で相談だけして保険は別のところで加入する、という人が増えると、優れたファイナンシャルプランナーが育たなくなってしまいます。

信頼できる人を応援することはお金の使い方としても素晴らしいものだと考えていただきたいです。

・相談前に事前に打ち合わせをする

記事冒頭のケースのように、ファイナンシャルプランナーと合う前に相談したい内容について事前に確認をしておくといいでしょう。

保険の見直しも必要であれば事前に伝えておいたほうがいいですし、不要であれば最初に伝えてあげることが親切です。

そうしたやり取りができない仕組みであれば、会ってみて出たところ勝負となります。

無料であればロスは無いかも知れませんが、時間が失われて、もしかしたら少し気分を害されることもあるかも知れません。

・有料相談を利用する

適正なサービスには適正な料金がかかるものです。

あなたの心配事が解決できる可能性があるとしたら、どれだけの効果があるのか想像していただき、それに見合った費用であれば有料相談を利用するといいでしょう。

有料である以上、相応に勉強をされているはずですし、ゴールに近づける可能性は飛躍的に高まります。

ファイナンシャルプランナーも無理に保険を勧めなくてもいいので、お客様と向き合う姿勢も変わります。

もしかしたら、有料でかつ保険もガッツリ勧めたい、というFPがいるかも知れませんが、どうしても相性が合わないと感じたら不要な部分ははっきり断りましょう。

必要なお金は払っていますので、胸を張って堂々とお断りしてください。

・FP事務所が直接運営しているサイトから申し込む

ファイナンシャルプランナーを検索するとたくさんの広告サイトが表示されるかと思います。

こうした広告サイトは、表示されるごとに費用が発生したり、クリックされるごとに費用が発生したりしています。

そしてその費用は、何らかの形で皆さんのところに振りかかってくる可能性があります(危険度別の解説のように)

そうしたサイトではなく、ファイナンシャルプランナーが独自に運営しているサイトを探してみましょう。

同じ無料相談であっても、集客サイトにお金を払う必要もありませんし、事前にその事務所の方針や得意分野、人となりなどが分かったりします。

大勢のFPが在籍している事務所より、個人事務所に近いほうが「人となり」という意味では分かりやすいかも知れません。

・オンライン相談を検討する

オンラインでの相談を受け付けているFP事務所は、生命保険の収益のみを追求する会社とは一線を画している可能性があります。

なぜなら、生命保険は対面での提案、契約を前提としているため、そもそも対面で会えない人はお客様になりえないからです。(コロナ禍でオンラインでの提案、契約に対応している会社も出始めましたがまだ一部です)

オンラインであっても、必要な情報のやり取りが出来たり、パソコンの画面共有機能を利用してしっかりと理解することも可能です。

オンラインでの相談はFPにとってもスキルが求められるため、堂々と「オンライン相談OK」と謳っているFPはそれなりのレベルがあることも期待できます。

子供が小さいため、夫は事務所で相談を受け、その相談に自宅で妻がオンラインで参加するといったハイブリッド型のオンライン活用もあり、お客様の立場に立った対応をしてくれる事務所もあります。

ファイナンシャルプランナーが持っている知識、情報やスキルは、ほとんどの人の人生を豊かにすることができるものです。

志高く有望なファイナンシャルプランナーが多く成長し、活躍することは社会にとっても大変有意義なことかと思われます。

サービスをご利用いただく皆さまも、この記事のような背景をご理解いただき、信頼できるファイナンシャルプランナーに出会っていただけたら幸いです。

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